ドイツは最大規模のストライキで空港停止 賃上げ要求はフランスでも「我々の革命」インフレ物価高へ抵抗

堀潤緊急現地ルポ
堀潤 Jun Hori 2023.03.28
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■過去数十年で最大のストライキ 高インフレが背景

ドイツでは27日、空港・バス・鉄道駅が一斉にストライキに入った。全国統一サービス労働組合(Verdi)と鉄道・運輸労働組合(EVG)はインフレによる物価高に対応するため、それぞれ10.5%、12%の賃上げを求め24時間の大規模ストライキを呼びかけていた。筆者はストライキ直前、丁度フランスから日本に帰国途中でフランクフルト空港にいた。フランクフルト空港はSNSで「ストライキ期間中は空港から出られなくなる可能性がある」と利用客への注意を促し、航空各社も対応に追われた。

フランクフルトと羽田を結ぶ、27日午後8時45分発の全日空(NH224便)は、44時間あまりの出発遅延で、29日午後5時10分に変更となった。ドイツ国内のほぼ全ての空港が停止し、40万人の利用客が影響を受けると見込まれている。運輸関係による今回の一斉ストライキは過去数十年で最大規模。いかに働く人々の暮らしが困窮しているのかを表している。ドイツでは、今月1日に発表された2月の消費者物価指数(CPI)が、EU基準で前年同月比9.3%上昇と1月の9.2%上昇から加速し、市場の予想を上回った。

このまま賃上げが実現されなければ、ストライキは今後も断続的に行われる見込みだ。ルフトハンザ航空は3月下旬から10月下旬にかけ計3万4千便分の運行を取りやめる方針だと地元経済紙が報じている。

■「我々の革命だ」仏では年金改革反対に加え、賃上げデモも

一方、政府が推し進める年金改革に反対するデモが全国に波及しているフランス。マクロン大統領は受給開始年齢を62歳から64歳に引き上げる年金改革を年内にも断行するとあらためて表明。テレビ番組でのインタビューで「暴力には屈しない」とコメントした。

パリやボルドーなどではデモ参加者の一部が店のガラスや公共物などを破壊したり放火するなどし、催涙弾などで警官隊が鎮圧を図り激しく衝突する様子が見られたものの、デモ参加者の多くが非暴力で行進して声をあげていた。

筆者が23日に取材したドイツ国境に近い街、メッス市では統制の取れた行進が行われ、音楽やアートなどを交えた平和的な行動で改革への反対の声をあげた。

現場で人々は何を語ったのか。

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  • ■去年は3回の最低賃金の引き上げ それでもまだ届かない
  • ■貿易赤字定着の日本が重なるジレンマ

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