世界の飢餓人口が急増 食料の奪い合いで紛争が始まっている

国連WFPの活動から考える危機 
堀潤 Jun Hori 2022.12.30
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このニュースレターは、アラブ首長国連邦UAEの都市、ドバイに向かう機内の中で書いている。

戦争や災害、気候変動などによって食糧を手にすることができなくなった人々へ食糧を届ける支援を続ける国連WFPの関連施設の取材などをするため現地を訪ねる計画だ。

彼らはどんな困難で過酷な状況下でも必ず食糧を届けるという任務を負っている。紛争や災害で孤立した地域に航空機を使って空から物資を投下したり、洪水で水に浸かってしまった地域では水陸両用車を使って水や泥を書き分け食糧を届けたり、温暖化で枯れてしまった大地に緑を取り戻す支援を行ったりと、様々な食糧支援で人々の命を支えてきた。

ウクライナでは、ミサイル攻撃が続く中、地下に退避している人たちに対して、現地のパン職人たちと協力して焼きたてのパンを配給する取り組みなども続けていた。温かなパンを手にした人々の束の間の日常の様子に涙が浮かんだ。

地域の人たちとの対話、協力をかかす事なく、最大限にできる支援を最適化して届ける国連WFP。「飢餓と闘う努力、紛争の影響を受けた地域の平和のための条件の改善への貢献、そして飢餓を紛争の武器としての使用を防ぐための原動力としての役割を果たした」として、2020年、ノーベル平和賞を受賞した。

■リクエストを受け48時間以内に物資を届けるネットワーク

国連人道支援物資備蓄庫(UNHRD)

ドバイには、国連WFPが世界に食糧を届けるための国連人道支援物資備蓄庫(UNHRD)がある。

UNHRDは、人道支援機関のために調達した緊急援助物資を保管し、迅速に輸送するグローバルネットワークで、国連WFPが運営している。

このネットワークは、国連機関内外ともに急速に数が増えている支援団体に代わり、医療品や、避難所設備、調理済食品といった救援物資の戦略的備蓄を行っている。

備蓄庫は世界6か所、イタリア、ガーナ、マレーシア、パナマ、スペイン、そして今回訪ねるドバイに設けられている。

備蓄庫の配置場所は、緊急事態に対処するための戦略的な配置。パートナーの要請から48時間以内に救援物資を発送することができるという。

皆さんは、今、世界がどのような食糧危機の現状にあるかご存じだろうか。日本国内にいるとなかなか感じることができない切迫した状況が世界を覆っている。

武装勢力の活動が活発化するアフリカ西部その原因は?

国連WFPによると、2022年のわずか数ヶ月で、世界の飢餓人口(急性食料不安)は、2億8200万人から3億4500万人へと増加。国連WFPは今年の支援対象者を拡大し、過去最高の1億5300万人への支援を目指しているという。今年半ばまでに既に1億1120万人へ支援を届けた。

世界的な食料危機は、気候危機、紛争、経済的負荷が重なりあって引き起こされている。

アフガニスタン、エチオピア、ソマリア、南スーダン、イエメンなどは特に深刻な状況で、飢饉を防ぐための活動が急務だとして国連WFPがパートナー団体との協力で緊急支援を続けている。

さらに、西アフリカでは武装勢力の活動が活発化しているという現状もある。それはなぜか?

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続きは、3200文字あります。
  • 気候変動で災害、食糧が足りない、だから森を伐採、負のスパイラル
  • コンゴ民主共和国で起きている過去最大規模の危機
  • ■私たちができる支援策とは?

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